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医療コラム 2007年11月1日 更新
切らない治療への挑戦『ホルミウム・ヤグレーザー』〜体にやさしい『前立腺肥大症』のレーザー手術〜
中高年の男性に多く見られる前立腺肥大症。その治療方法のひとつ「ホルミウム・ヤグレーザー」は、お腹を切らずに尿道から内視鏡を挿入し、肥大症を起こしている部分をみかんの実を指でむくように取り除く治療法です。高齢者の方も安心して受けられる治療法のうえ、出血が少ない点でも注目されています。

博愛会病院(福岡市)泌尿器科部長 持田 蔵(もちだ おさむ)

尿がうまくでない
・排尿に時間がかかる
・尿に勢いがない
・夜間に何度もトイレに起きる
・尿が時々もれる

このような症状はありませんか?

男性には前立腺という精液の一部を作る臓器があり、ここに病気が起こると前記のような症状が起ってきます。特に前立腺肥大症という病気は前立腺が大きく肥大することにより、尿の通り道(尿道)を圧迫し、排尿を障害します。

50歳以上の男性に多く見られ、患者数は近年急激な増加傾向を示し、約80万人が現在治療中と言われています(2001年国民生活基礎調査:厚生労働省)。

「もう年だから、尿の出が悪いのはしょうがない」とよく耳にしますが、その原因の多くは前立腺によるものです。前立腺の大きさは通常くるみくらいの大きさですが、前立腺肥大症になると、みかん→りんごと大きくなっていきます。

前立腺肥大症が悪化すると、「尿閉」といって尿が一滴も出ない状況になることもあります。また、尿をためる膀胱に障害が起こり、残尿(排尿できずに残ってしまった尿)が増加し、水腎症(尿を作る臓器である腎臓が腫れる)を来たし、腎不全、尿毒症、尿路感染症、尿路結石、心臓疾患などを引き起こすことがあるため十分な注意が必要です。

前立腺肥大症は良性の疾患で、悪くなると前立腺がんになるといったことはありませんが、前立腺肥大症に前立腺がんが併発することは少なくないため十分な検査が必要となります。

前立腺肥大症の治療は、内服薬を用いた薬物療法と手術療法があります。薬物療法で十分な効果を得ることができないときは手術療法の適応となります。現在、前立腺肥大症に対する手術療法の標準術式とされているのは経尿道的前立腺切除(TURP)です。

これは尿の出口(外尿道口)より内視鏡を挿入し、肥大した部分(肥大腺腫)を切除する方法で、70年以上も前から行われています。合併症として約6%に輸血を要し、大きな前立腺肥大症に対しては施行困難であるため、開腹手術を行わねばなりません。
そこで近年、より侵襲の少ない(体にやさしく合併症が少ない)手術法が待望されていました。

ホルミウム・ヤグレーザーの登場で手術が変わる
ホルミウム・ヤグレーザーは、一度の操作で止血・切開・蒸散ができるため極めて出血の少ない処置ができます。レーザーの深達度が0.4mmと浅い点も特長のひとつです。(図1

こういった特性を生かし、泌尿器科領域においては、尿路結石、尿路の狭窄(きょうさく)などの疾患に汎用(はんよう)され、従来法よりも「低侵襲」な手術を実現することが可能になりました。
図1:ホルミウム・ヤグレーザー(写真)

ホルミウム・ヤグレーザー前立腺手術の実際
経尿道的(尿の通り道を通って)に内視鏡を挿入し、ホルミウム・ヤグレーザーを用いて肥大した部分(肥大腺腫(しゅ):内腺)のみを取り除きます。
図2

前立腺肥大症を夏みかんにたとえると、みかんの実は肥大症を起こしている肥大腺腫(内腺)、みかんの皮は肥大症を起こしていない残すべき前立腺の部分(外腺)、果汁は血液にあたります。このみかんの実(内腺)を取り除く手術を行います。
図2:前立腺超音波検査 術前・術後写真
図3:HoLPとTURPの違い TURPではみかんの実に切り込むため、多くの果汁(血液)が出ることとなります。ホルミウム・ヤグレーザー前立腺手術(HoLP)は、みかんの実を指でむくように取り除くために果汁(血液)があまりでません。(図3

肥大腺腫(内腺)を取り除くために、膀胱(ぼうこう)頚部(前立腺の膀胱側)と尿道粘膜(前立腺の外尿道側)、前立腺の3カ所に切開を行いますが、レーザーの特性により出血は少量で済みます。出血が少ないことは、術後にも大きく影響し、手術当日には夕食も食べていただけます。

手術に関する実際についてはホームページに特集させていただいています。

合併症は血尿、術後尿道狭窄、逆行性射精、一過性腹圧性尿失禁などを認めることがあります。退院(術後3〜4日)後すぐよりウォーキングなどの軽い運動、自動車の運転などは可能ですが、ゴルフなどの激しい運動は術後1カ月、自転車・バイクなどのまたがる乗り物の使用は術後3カ月程控えていただいています。

従来法(TURPや開腹手術)と同等以上の効果を示し、合併症が少ないことは世界的に諸家が報告しておりますが、体の中にあるものを取り除くわけですから、やはり創傷(手術部位の傷:前立腺)の治癒には1〜3カ月を要します。この間は排尿痛や頻尿などが時々起こる場合もあります。

前立腺肥大症治療の今後
排尿をうまく行うためには(1)尿の通り道が十分に開放されていること(2)尿を押し出す力が十分にあることが必要です。

前立腺肥大症は(1)を障害する疾患で、排尿困難のすべての原因ではありません。排尿困難があった場合には、まず十分な検査・診断を行い適応をしっかりと検討し、術後どの程度の回復が期待できるか予想した上で十分な話し合いの後に治療法を決定することが肝要と思います。

手術療法においては術式にいくつかの選択肢がありますが、病状や生活に適した術式を選択することが重要です。昨年HoLPのライブ手術を行った際、参加泌尿器科医の9割以上が「HoLPに取り組みたい」と答えており、今後ますますの普及が期待できるようです。HoLPは、より「低侵襲」、より「安全」な手術への大きな選択肢の一つと考えられます。(寄稿)
HoLPの特徴 長所と短所

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